靴に恋して(#343)

wowowで『靴に恋して』を鑑賞。
スペインを舞台に5人の女性の抱える問題と人生が交錯していく。
靴デザイナーになることを夢見ながらも、夜は店から盗んだ赤い靴をはいてディスコで踊る靴屋の店員。キャバレーのマダムをしながら、知的障害者の娘を一人で育てる母親。その子供で、お世話に来てくれる青年に恋心を寄せる精神年齢が7歳の25歳。夫が急死して夫の連れ子3人を養うために夫のタクシーに乗る運転手。小さな靴をはくことで自分を傷つけ夫に愛されない孤独を埋めようとする妻。それぞれの女性が問題と向き合い、一歩踏み出すまでのストーリー。
立場の違う女性たちがしっかり描けていて、いい作品。この監督は今作が初長編監督だったとは感じさせないプロットと映像。多少5人の関係が強引だったり、過密すぎるかなとも感じるけれど、脚本が良く練られている。作品から伝わる雰囲気は、スペインらしく情緒豊か。テイストとしてはフランス映画にも似ている。映像も単に美しいというよりは、フォーカスの合っている女性の心情がひしひしと伝わるよう。
良かったシーンは、レイレが恋人のクンが荷物を運び出しているところに居合わせるシーン。そしてアデラがアニータのホアキンに寄せる思いを知って急に不安になるシーン。それぞれ複雑な思いが良く描かれている。
題名は『靴に恋して』で、“最高級のゴージャスな靴が300足”なんてコピーが残念。靴は女性たちの性格や抱える問題が見え隠れする重要なアイテムなんだけど、コピーから受けるようないろんな靴が出てて靴の好きな人は楽しめますよなんて印象ではない。こんなコピーでは『60セカンズ』みたい。
見終わって思い返してみると、すべての複線がきれいに帰結しすぎる印象はやはりある。相関図が内へ内へ向くことで、話は深くなる分広がりがないので息苦しさも感じた。あと、アデラ役の人がどうしても男に見えてオカマで養子を育ててる設定かと思ってた。

靴に恋して [DVD]

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靴に恋して official site
http://www.elephant-picture.jp/kutsunikoishite/