つばさ

ほぼ真逆の作品『つばさ』を鑑賞。
記念すべき第1回アカデミー賞の作品賞。1927年製作。
白黒・サイレントで第1次世界大戦を舞台にしたダイナミックなドラマ。ただの戦争映画では終わっていない。恋愛、友情、飛行機戦闘シーン、悲劇と盛り沢山でありながらもバランスの取れた名作。
今までサイレントといえば、チャップリンキートンといったコメディばかりでドラマを観たのは初めて。むしろ気になったのは、後から付けたと思われるナレーション部分。おそらく、元々音声は音楽だけでセリフ部分は画面が字幕に切り替わるだけのはずなのに、分かり親切心からかセリフ以外の部分でも女性の声で吹き替えたりナレーションが入っているのがとても邪魔。たしかに場所によっては戦況の説明や、これまでの経緯などありがたく感じることもあったけど、字幕に出ないセリフなどは状況を察すれば容易に想像がつくのにも関わらず抑揚のない声でしゃべられると台無し。
撮影はアメリ陸軍省が支援というだけあって臨場感たっぷり。と言っても現代のCG多用の作品とは比べられないが、空中での戦闘シーンには数あるその後の戦闘機映画の基本となるシーン・カット割が全てある。時代的には『紅の豚』の少し前くらいなのでイメージが湧きやすい。今の戦闘機とは全く違って、エンジン+固定翼+機関銃というオール手動の飛行機乗りの姿がどんなだったかよく分かる。
ドラマ部分でも、ジャック、デイビッド、シルヴィア、メリーの人間関係、彼らに起こった悲劇、ラストシーンとよく出来ている。とくに戦場で英雄となったジャックがパレードで出迎えられた後、自らの銃撃で殺してしまった親友のデイビッドの両親に彼の死を報告する場面は秀逸。ジャックを迎えた両親は「あなたが悪いんじゃない、戦争が悪いんだ」。
脇役としてゲイリー・クーパーも出演。この時点ですでに主役の2人より断然かっこいい。
この映画の公開当時、アメリカ国民はこれを見て大戦のヒーローを描いた作品と見たかもしれないけれど、今見ると当時の戦争の様子というのを知るいい資料でもある。
最近の映画ばかり観てる人はこの映画を間延びした退屈な作品に感じるかもしれない。

つばさ [DVD]

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