『ブラフマンの埋葬』

ブラフマンの埋葬

ブラフマンの埋葬

博士の愛した数式』以来の小川洋子作品。うーん、どうしても『博士―』の印象を持って読んでしまう。前作がかなり良かったのでそれと比べるともうちょっとといったところ。最後まで、ブラフマンがなんなのかは明かさなかったけど、著者は実在する動物をイメージしているのかなぁ・・・。ブラフマンを見つけてからタイトルどおりに埋葬まで。ストーリというよりは情景や日常を垣間見るような作品。その中でも小川作品らしさもありつつ良作。さらっと読めて実際1時間くらいで読み終わった。
登場人物には生々しさがなく名前も分からない、舞台もどこか日本ではなさそう、ブラフマンの正体も不明。全体的にホワっとした明確なものがない。まるで誰かの頭の中で起こっている物語のよう(まあ、著者の頭の中であることは確かなんだけど)。もしかしたらブラフマンも実在しない想像上の生き物を想定しているのかも。
これといった起伏があるわけでもビックリするような仕掛けがなくても、読後感が優しい作品。表紙の山本容子の装丁がこの作品にぴったりだ。