ベルリン、僕らの革命(#523)

wowowで『ベルリン、僕らの革命』を鑑賞。
現代のドイツ・ベルリン。青年ヤンとピーターは金持ちが牛耳る今の資本主義社会に不満をもち、不公平な世界に対して情熱的に抗議する若者。ピーターがスペインへ旅行中、ピーターの恋人ユールの立ち退きの手伝いに出かけたヤンは彼女が多額の借金を抱えていて、この立ち退きも家賃が払えなくなったからだと知る。彼女は、高速道路でよそ見をした一瞬に前のベンツSクラスにつっこんだらしい。富豪のハーデンベルクにとってはほんのはした金だったが、彼女にとっては安い賃金で何十年も働かなくてはいけない、すべてを失うには充分すぎる額だった。事故の責任は自分にあることを受け入れていたユールにヤンは社会の不公平を説く。そしてユールには内緒だった“エデュケーターズ”としての活動を打ち明ける。“エデュケーターズ”は金持ちの家に忍び込み家具を動かして、ぜいたくに対する警告を残して去っていくのを繰り返ていてた。それを聞いたユールは自分が突っ込んだベンツの持ち主の家に忍び込むことを提案する。仕事を終え帰った2人だったが、携帯電話を忘れたことに気がつきもう一度戻ることに。そこでユールは帰ってきたハーデンベルクと遭遇してしまう。どうしていいか分からなくなったヤンとユールは、帰国していたピーターを呼び相談する。そして3人はハーデンベルクを誘拐することに。
現代ドイツの社会的背景の中で活動する若者たちを描いた青春恋愛ドラマ。この映画のテーマは“若さ”に尽きる。若いってこういうことだと再認識させられる。東西ドイツの統一以来、経済的な格差は埋まらずそしてEUの枠組みの中でより拡大してきた失業率。一見先進国として成功しているかに見えるドイツの実情をリアルに感じさせる作品。
彼らの主張は世界の不公平を是正すること。ベルリンの町で100ユーロで売っているスニーカーの原価は5ユーロ。東南アジアの子供が学校も行けず、生活のために信じられないような安い賃金で働かされている。子供たちは何十年働こうとも貧困からは脱出できず、巨大メーカーはどんどん私腹を肥やし続ける。ドイツの若者たちの情熱は自らが恵まれていない境遇にいるからこそ根付いた思想かもしれないけれど、そこには真実がある。
この映画の構造としては、彼らが誘拐した金持ちが昔はレジスタンスの活動家だったという部分。共産主義の下で育ったハーデンベルクはかつてヤンたちと同じような思想を持ち、先頭に立って活動してきたが年をとるにつれ自然にいい車に乗りたくなったり、いい生活がしたくなるんだと説く。誘拐されて、彼らの若さや熱い思想に触れている間にハーデンベルク自身も昔の自分を思い出し始め若者たちにシンパシーを感じ始める。
いままで何も盗まず、壊さずやってきた“エデュケーターズ”は初めて人を誘拐してしまったことで大きく揺らぎ、ヤンとユールの間に恋心が生まれ始めたことで内側から崩壊し始める。“若さ”とはこんなにも不安定なのかと感じさせる一瞬。
監督はハンス・ワインガルトナー。主演は「グッバイ、レーニン!」のダニエル・ブリュール
ドイツ映画として11年ぶりにカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された作品。
自分の中でかなり上位に入った1本。

ベルリン、僕らの革命 [DVD]

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ちなみにこの作品のサントラもかなり気になるメンバーが揃っているので注目。
The Edukators

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