処刑人(#487)

wowowで『処刑人』を鑑賞。
敬虔なカトリック信者のマクマナス兄弟。彼らは見ているだけでは世の中は変わらないとの信念で、自ら悪党を処刑する。最初はバーでけんかになったロシアンマフィアを殺し、警察に呼ばれるが釈放。世間は彼らを英雄と賞賛した。彼らのターゲットは大きくなり、ロシアンマフィアの壊滅、そしてイタリアンマフィアへ。
確かトレンチコートマフィアか何かの影響で公開が延期になった作品。テーマ的にはリンクする部分はあるものの、内容も特別過激でもないしむしろ宣伝になったとみるべきかも。
誰もが心の奥底では考えたことのあるであろう欲求を、神の名を借りてやりたい放題している危険な兄弟を描いたバイオレンスアクション。「法の届きにくい強大な悪に対して殺人という手段を使うことは倫理に許されるのか」という宗教とバイオレンスをテーマにしたバイオレンスアクション。映像から受ける印象からも、監督の狙いは理解できるんだけれども、映画としてはつまらない出来。兄弟をもっとニュートラルな描き方をしてれば、見る側にも葛藤があって少しは深みが出たのかも。
最初の狙いはボスだけだったのに下っ端も殺すことを許したりして、倫理だけでなく信義にもぶれが出ている危険な2人に、捜査官までもが同調する流れが理解できない。ゲイの彼が娼婦の格好をして乗り込むのは面白かったけど。
ヒーローにもアンチヒーローにもなりきれない、教会の教えを曲解して暴走する狂信者でしかない。
ラストで彼らに対する市民のインタビュー的な映像が入るけれど、全くの蛇足。これを入れることで、決して彼らの行動が正しいといっているわけではありませんよって言い訳しているだけで見苦しい。

処刑人 [DVD]

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