オペラハット(#422)

wowowで『オペラハット』を鑑賞。
巨匠フランク・キャプラの代表作の1本。主役はゲイリー・クーパー。最近彼の作品が多い。
主人公ディーズは田舎暮らし。たまに依頼される絵葉書に詩を書いたりチューバを吹くことを趣味としているのんびり屋。その彼のもとに突然大富豪の遺産2000万ドルが転がり込む。ディーズは残された遺産を管理するためニューヨークに移ることになる。しかしそこで待っていたのはお金目当ての人間や、一夜にして富豪になった男の正体を記事にしようとたくらむ記者たちだった。ある晩、どこへ行ってもまとわりついてくる弁護士やらボディーガードたちを振り切って1人で屋敷を出た。そこで目の前で倒れこむ女性ベイブと出会い、恋に落ちる。自分の一挙手一投足が面白おかしく記事に書かれることや、近寄ってくる薄汚い人間たちに嫌気がさしていたディーズにとってベイブの存在は唯一の光に感じられたことだろう。ついにディーズはベイブに結婚を申し込むことを決心する。ベイブとのランチの支度をしているときにとんでもない情報が舞い込んだ。なんと彼を悩ませてきた新聞記事を書いていた記者こそがベイブだったのだ。何も信じられなくなったディーズはこの苦しみは遺産が原因だと考え、相続した遺産で貧困に喘いでいる人たちに農場を分け与えて自分は故郷に帰ることを決心する。しかしこの決定を聞いた弁護士はディーズがまともな判断力のない状態だと主張し、彼から遺産を取り上げるようディーズを審問にかけた。
本当に素晴らしい映画。
1936年公開で、不況のどん底にありながらも自分のことしか考えない上流社会を風刺したコメディ。
なんといってもディーズのキャラクタが魅力的。
遺産を相続しディーズがニューヨークへ出かけるシーンは観客全員にディーンの人柄を行き渡らせる。そして観客は、莫大な遺産と彼の純朴な人柄から、彼がだまされるんじゃないかと不安を覚える。しかし、彼はバカではなかった。彼からお金を取ってやろうとたくらむ人間たちの思惑にすぐに気がつき観客は安心する。
監督のキャプラはこの手法を他にも使っている。審問の場でも最初何も発言しないディーズに一時は躁鬱の症状と判断されたが、ベイブの言葉をきっかけにして雄弁に反論を始める。こうやって押したり引いたりすることで観客は画面に引き込まれる。悪意を持って近づく人間たちには敏感に反応するディーズだったが、ベイブにだけは違っていた。
当時は問題なかったんだろうけど、今見るとあまりに簡単に人を殴ってしまうディーズにちょっと引いてしまう。さすがに審問の場で相手の弁護士は殴らないほうがいい。
『Mr★ディーズ』としてリメイクされている。