ボーイズ・ドント・クライ(#413)

ボーイズ・ドント・クライ』を鑑賞。
この作品で、主役ブランドンを演じたヒラリー・スワンクは最初のアカデミー主演女優賞を獲っている。
性同一性障害を抱えながら男として生きようとしたティーナ・ブランドンという実在の人物をモデルにした物語。自分らしく生きたいただその衝動だけで突っ走り、自分が女であるということを誰も知らない街へたった一人で訪れる。その街で出会ったラナと恋に落ちるがブランドンが女であるということが発覚する。するとそれまで暖かく迎え入れていた仲間たちは豹変しブランドンを怪物のように扱いブランドンを襲う。その中でもブランドンを変わらず信じたのはラナだった。ラナへの愛が一層深まる中あまりにも悲劇的な結末が。
実はラストまでこの映画が実話を基にしていると知らずに観ていた。結末があまりに絶望的だったので他のラストはなかったのかなとぼんやり考えていた時この作品が実話だったことを知った。
差別や偏見と戦う映画は数多い。そのほとんどは過去のものであって今現在の実社会では黒人などマイノリティーへあからさまな態度が許されることはない。どんな差異(宗教・外見・地位)も差別や暴力の根拠にはなり得ないと信じ込んでいる自分にはこの出来事が1993年と最近のことということにも驚かされる。しかし思い返してみると1993年当時果たして自分が性同一性障害を理解できていたのだろうか。ひどく粗野で危険な男に見えるジョンやラナの母親も、ずっとかわいがってきたラナが嘘をついて近づいてきたレズビアンから守ろうと必死だったんじゃないかとも思えてくる。
こうやって考えると偏見や差別というものがどれだけ恐ろしいものか、自分自身は今現在知らず知らずのうちに差別的思考を持っているんじゃないか不安になる。
ただありのままの自分を生きようとしただけ、普通の男の子みたいに女の子とデートや恋愛をしたかっただけ、それだけなのにこんな悲劇なんて悲しすぎる。
この映画の背景でいうと製作はインデペンデント。社会派の独立系小規模映画でアカデミー獲得という面では今年のアカデミーに通じるところがある。また、主役のヒラリー・スワンクの演技には拍手を送るしかない。生まれ持った男性的な顔立ちも手伝って本物の男性に見紛うほど。
監督・脚本のキンバリー・ピアースはこの作品以来作っていないようなのが残念。

ボーイズ・ドント・クライ [DVD]

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