ぼくの伯父さん

NHK-BSで『ぼくの伯父さん』を鑑賞。
初めてのジャック・タチ作品。建物や車のセットがかっこいいものばかり。キューブリックを初めて観たときのような新鮮な衝撃。セットデザインにはジャック・ラグランジュ
過剰なまでに未来志向な姉夫婦の豪邸はキッチンのからくりや電動で開閉する玄関と車庫、オープンな雰囲気のリビングにはイーズムの家具とどこまでもモダン。そんな豪邸に住んでいるのに、お客さんがあるたびに噴水を出すという見栄っ張りなところもかわいい。ユロ伯父さんの継ぎはぎだらけでレトロなアパルトマンもとてもセンスがいい。イームズのソファを倒してベッドにして寝てしまうユロの性格がそのまま出ているよう。
セットもさることながらカットや音楽も素晴らしい。最初の台詞のない7−8分だけでもぐいぐい引き込まれた。文明批判という現代では古臭い主題が根底に流れるものの、表現される世界観や1カットごとの映像から受ける印象はむしろ新鮮。
コメディ部分ではどことなくサイレント時代を思い起こさせる。58年の製作ということに驚くと同時に、その年代だからこそ作れた作品。
こんなにすばらしい監督の作品を見逃していたことに後悔。
進みすぎた文明の進歩の中で、最終的にユロの子供のような無垢の持つ価値は普遍だというラストも好み。素晴らしいコメディ映画。

ぼくの伯父さん [DVD]

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