乱歩地獄


乱歩地獄』を鑑賞。
近くのシネコンで見たんだけど、単館系の映画の割には客が入ってて驚いた。女性客が多かったのもこの作品の特徴かもしれない。
江戸川乱歩原作のショートストーリ「火星の運河」「鏡地獄」「芋虫」「蟲」の4本で構成されるこの作品。乱歩のエログロ怪奇の雰囲気がセンス良く表現されている。監督がすべて違って、キャストも浅野忠信以外は異なる4本が並ぶんだけど、なぜか調和を乱してないのが乱歩に対する共通の理解があるからなのか。
あえてこの作品たちのデキに順序をつけるとすると「蟲」「芋虫」「鏡地獄」「火星の運河」かな。
火星の運河」は尺自体も短くて、内容も薄い。印象的な作品ではあるけれど、単体で考えると他があるから見れるレベル。逆にこの原作を読んでみたくはなった。
鏡地獄」は明智小五郎(浅野)が、女たちが顔を焼かれて死んでいくという事件に出会って、真相を解き明かしていくといういわゆる探偵モノ。もちろん主題はそこには無くて世界観や描写にある。SMだったり和鏡の一つ一つが独特の乱歩の世界観を成している。メインとなる和鏡職人には成宮寛貴。今回の演技が特別良いとは思わなかったが、確実に新しい扉を開いたね。この人はいつも誰かに似てるなと思うんだけど出てこない。
鏡がたくさんでカメラワークは大変だろうな。でも逆に計算しつくせば相当面白いこともできそう(この作品もかなり良かった)。独特の雰囲気を作るためだろうがやたらとカメラ斜めのカットが多かったのは気になった。この題材でここまでできてるのだからもっと真っ向勝負でいって欲しかった。あと、市川実日子かなり期待してたのにほんのちょっとしか出てこなかったのは個人的に残念。
芋虫」。この作品は一番難しい。この4作品のなかでは一番乱歩の魅力が表現された作品。これも明智小五郎モノ。ただ、明智(浅野)はほとんど出てこない。ストーリの中心は戦争で四肢を失った“芋虫”となった元軍人とその妻。2人はひっそりと廃墟のような場所で暮らしている。妻はよき妻であろうとする反面、夫を傷つけ異常な快楽を感じる性衝動に駆られる。軍人を演じる大森南朋と妻役の岡元夕紀子の体当たりの演技が圧倒的な存在感。映像的に一番きれいだと思ったのはこの作品。
この作品の小林少年は「鏡地獄」とは違って韓英恵
そして「」。ストーリはアレルギーで人に触れるのも嫌な男(浅野)は憧れの存在である女優木下芙蓉(緒川)の運転手をしている。そして手の届かない存在だった木下が、自分の運転する車で恋人に会いに行く木下に耐えられず自分のものにしたいと思う。思い切って花束を渡すことはできたが生きている人間に触れると発作が出てしまう。一緒にいるために木下を殺してしまう(ちょっと省きすぎかも)という倒錯的内容。他の3作品にも共通する乱歩イズム。怪奇、エロティシズム、グロテスク。なのにこの作品はどこか笑える。
この作品は何をおいても緒川たまき。なんだろうかこの魅力。妖艶でいて清楚。こんな女優は他に何人いるか。ストーリ的にはよくある話。しかし、キャスティングも含めてアイテム一つ一つが効果的。車だったり、病院に飾ってある絵、ブリーフ姿の浅野忠信
この『乱歩地獄』は思い出すたびにいい映画だったなと。衣装・アイテム・キャストどれも魅力的。
上映中に1人2人と席を立ったので、合わない人もいるのかもしれないけどね。DVD欲しいな。


乱歩地獄 official site
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