『熊の場所』

熊の場所

熊の場所

簡単にストーリ。当然ネタばれはないです。
小学5年生の沢チンが、同級生のランドセルを落として中身をぶちまけてしまった。しかし、ランドセルの中から教科書やプリントに混じって出てきたのは猫の尻尾だった。それを見てしまった沢チンにランドセルの持ち主であるまー君は「殺すぞ」。沢チンは保育園から一緒だったまー君の意外な一言に恐怖を覚える。しかしここで思い出したのは「恐怖を克服するためにはそこへ戻らなくてはならない。」一度は帰った道を学校目指して戻っていく。
まー君の異常性を知りながらも、魅力に惹かれていく。そのうち、猫だけではなく近所の犬がいなくなる。そして人間の子供まで。
まあ、こんな感じでしょうか。うーん、初舞城。読んでて新鮮に感じる作品。文体も特徴的ではじめはいりにくい人もいるかも。でも、引き込み方がうまい。特に表題作の『熊の場所』は秀作。途中からホラーを読んでるよう。主人公の少年の恐怖に立ち向かうことの恐怖や使命感、そして好奇心。心理描写がすばらしい作品。まー君の家に泊まる夜のドキドキ。一気に読める。
表題作以外の『バット男』『ピコーン!』はイマイチ。『バット男』はなんだろ?現代の闇をいろいろ入れて登場人物を青年に設定しただけというか。悪くはないが『熊の場所』と比べると・・・。読んでてなんでこんな話聞かないといけないんだろうってな感じです。弱いものいじめの連鎖。お金出して時間使ってこんな話聞きたくない。そんな作品。もちろん好みの問題もあるんですけど。『ピコーン!』は読んでてセックスの描写が女性的。舞城は性別を発表してないからもしかして・・なんて思ったり。前の作品でも学生の会話シーンではそう感じる箇所も何箇所かあったし。まあ、勝手な予想。作者が男だろうが女だろうが関係ないんだけどね。綿矢みたいに顔で部数伸ばすつもりなら別だけど。